〜虎牢関の戦い・前編〜

第4話「謎の刃」

 

「……」

―タン―

呂布と少し距離をとったところで劉備は着地した。
「どうした? なんか腑に落ちねぇって顔してるぜ?」
劉備は長剣を地面に刺し、呂布へ声をかける。
「……」
呂布は考える。
 目の前に飛んできた男の攻撃は確かに弾いた。
後ろで馬を駆っている青竜刀の男は何かできる距離にいない。
そして後ろの蛇矛の男も何もしていない。
遠くに見える一軍も動いていない。
「どこから……攻撃を」
呂布は、この戦ではじめて口を開いた。
「さて? どこかねぇ」
劉備は再び剣を構えながら呟く。
「……」
その一言で、謎の一撃は飛んできた男の攻撃だと分かった。
 後はその攻撃方法を探せば終わる。
そう考え呂布は劉備へ馬を走らせる。

「はぁぁ!!!」
劉備は再び飛び上がり、馬上の呂布へ先制攻撃を浴びせる。

―キィイン―

呂布は先ほどと同じように大矛で受け、劉備の攻撃を弾く。
「益徳!!」
「わかってらぁ!!!」
劉備の言葉に答えるように、張飛が呂布へ攻撃した。

―ガキン―

呂布はそれも受け、やはり弾き返す。
 蛇矛の男はこれですぐに攻撃できず、長剣の男もまだ空中にいる。
攻撃があるはずがない。
それでも

―カチン―

金属音が響き、再び謎の一撃が来た。
「!!」
謎の一撃は呂布の肩鎧をかすめた。
驚いて劉備の方を見るが、やはり劉備は空中で長剣を構えていただけだった。
 呂布は考えた、長剣で攻撃したあと、この男に再び攻撃する方法があるか。
「!!」
そこで呂布は気がついた。
 今劉備はその身に二本の剣を持っているということに。
長剣での一撃のあと、腰の剣でもう一撃をした?
そこまで考えて呂布は思った……断じて否、と。
空中で腰の剣を抜き、一撃を見舞った後再び気付かれずに鞘に戻す。どう考えても動きに無理がある。
ならばどうやって?
「はっは!!」
迷ってる迷ってると笑いながら劉備は再び着地する。

―ザザッ―

そこへ関羽が駆けつけてくる。
「今だぜ!! 曹操さんよ!!」
劉備の声に答えるように、曹操が兵を動かした。

―ダダダダダッ―

呂布になど目もくれず、虎牢関を一気に突破した。
「……」
呂布はそれを止めようとして、止めた。
「そうそう!! 呂布……あんたの相手は俺たちだぜ!!」
劉備が三度呂布へ向かって走り出した。
 今度の相手は三人、謎の一撃を見切らねばやられる。
呂布はやはり劉備へ攻撃をしようとした。
「ぬん!!」
しかしそれを関羽が阻んだ。
「おらぁ!!」
その後ろから張飛が同時に攻撃を仕掛けてきた。

―ガガン!!!―

呂布は二人の攻撃を同時に受け止める。
「はぁっ!!」
そこに劉備は一撃を入れた。
「!!」

―ギギィィン―

しかしそこは人中の鬼神、無理な体勢から劉備の攻撃を受けきった。
 次だ!!
呂布がそう考えたとき

―カチン―

またしても金属音が響いた。
 謎の攻撃の前の金属音
 三人の男たちが持つ武器
 攻撃方法
それらを瞬時に見極め、呂布は動いた。

―キィィィィィィィィィィィィィィン―

今までよりいっそう高い金属音が響いた。
「なっ!!」
劉備もさすがに驚いていた。
「見切った……」
そんな劉備へ呂布が小さく呟いた。
呂布は全ての攻撃を受け止めている。
今、呂布を攻撃している刃は四つ。
そして彼を攻撃している武器は
 関羽の青竜刀
 張飛の蛇矛
 劉備の長剣
の三種類だった……。

―ガキィィィン!!―

すべての攻撃をはじいた後
「考えれば単純な答えだった」
呂布はそう言って劉備を見た。
謎の攻撃の主はやはり劉備だった。
そう、劉備は呂布の最初の読みどおり二本の剣を使って攻撃をしていた。
その証拠に、今劉備の手には二本の剣が握られている。
ただ……劉備の腰につられている剣は鞘に収まったままだった。
 つまり今劉備は両手に二本、腰に一本の計三本の剣を持っている。
しかし劉備はどこに三本目の剣を隠していたのか。
「はっは!! ばれちまったか!!」
劉備は呂布から距離をとり、謎の攻撃の種明かしをした。
 呂布のいうとおり、答えはいかにも単純なものだった。

―カチン―

たびたび聞こえた金属音が響く。
 今劉備の身にある剣は手に握られている長剣一本と腰につられた一本。

―カチン―

もう一度音を鳴らし、劉備は剣をまた三本に増やした。
「一本と見せかけ……実は二本の剣だったか」
「正解! 見事だぜ呂布!!」
劉備はそう言って左右の剣を再び合わせる。

―カチン―

と言うおなじみの音がして、二本の剣は一本の長剣の姿に戻った。
「これは俺の自慢の剣でな……名前を『夫婦剣・雌雄一対(めおとけん・しゆういっつい)』ってんだ」
劉備の長剣をよく見ると、中央に溝が入っていた。

―カチン―

劉備が再び金属音を鳴らすと、一本の剣は中央の溝から綺麗に分かれ、半分ずつの二本の剣と化した。
「さて、小細工はこれで終わり!!」
劉備はそう言って双剣を構え叫んだ。
「雲長!! 益徳!! いくぜ!!」
「「応!!!」」
関羽と張飛が同時に答え、再び呂布へ向かっていった。

 

 

……中編へ続く。

 

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